路面電車はどうやってポイントを切り替えるのか?
器用に曲がっていく小ぶりな電車
日本の各地を走っている路面電車。その運行形態は地域に密着したもので、路面電車が走っている都市では街中を走る電車の姿は見慣れたものですが、ふだん路面電車の走っていない地域から訪れた人たちは、ひとつ目で前後ドアのクラシカルな電車から、地面すれすれを走る超低床の最新型LRVまでの多彩な電車や駅間の短さ、電車なのにバスのような運行をすることなどに新鮮な感じを受けるでしょう。
▲長崎の路面電車、現役最古参の201形と最新鋭5000形のすれ違い。
そして、物珍しい目つきで路面電車を観察している鉄道ファンの方は、交差点の急カーブを、フランジを軋ませながら曲がっていく電車を見ていて、気になることが出てくるかもしれません。それは、「ポイントをどうやって切り替えているのだろう?」ということです。
「ポイント」というのは線路が2手かそれ以上に分かれている部分、つまりレールの分岐点を指します。
現在、JRや私鉄など、日本の鉄道線路においてはポイントの切り替えは集中制御であることがほとんどです。列車の行き先などに応じて自動でポイントが操作されます。
しかし路面電車のポイントはそのような自動での切り替えは行っていません。現場で、運転士さんがポイントを操作しているのです。
その方法を、地元長崎を走る路面電車を例にとって書いていこうと思います。
電車の検知装置はどこ?
長崎電気軌道、公会堂前電停にて。
▲電車が2両続けてやってきました。
▲1両はポイントを直進しましたが…
▲もう1両はポイントを曲がっていきました。
どこにポイントの切り替えスイッチがあって、いつ切り替えをしているのでしょうか?
軌道回路はありません。集中制御でもありません。低速で走る路面電車ならではの切り替え方法があるのです。
切り替えスイッチはレールや車輪にあるのではなく、頭の上にある架線に付いています。
これは「トロリーコンタクター」という名前で、路面電車のポイント切替などに使われているものです。(以下、トロコン)
トロコンの真下を電車が通過すると、垂れ下がっている棒にパンタグラフが接触してそれがスイッチとなります。
▲公会堂前のポイントを電車内から撮影したもの。5系統 石橋行きと4系統 正覚寺下行きは直進。3系統 赤迫行きは右折します。
ポイント切替の手順
まず、ポイントの手前にはトロコンと、
「直」「曲」を交互表示する電車用信号が設置されています。
信号機の下に付いているバーは残り時間で、「直」「曲」の表示は6秒ごとに変わります。
ポイントを直進する4系統 正覚寺下行きがやってきました。
信号機が「直」を表示している間に…
パンタグラフでトロコンをパチンと叩きます。
自動車用の交通信号と連動して電車用信号が矢印を出し、電車は直進していきました。
右折する3系統 赤迫行きは「曲」の時にトロコンを叩き、ポイントを切り替えます。
このような流れで、路面電車はポイントを切り替えています。
ポイントを通過したところにもトロコンがあり、それを叩くと電車用信号は×印の停止表示に戻ります。
▲広電5100形Green mover max 5106号(宇品二丁目)
広島電鉄などではまた別の方式でポイントを切り替えています。
トロコンを2つ設置し、2つを連続してパチッパチッと叩けば左、1つ叩いて一時停止し、一定時間が経過すると右へ切り替わると言う方法や、交差点によっては電車に搭載されたICチップから行き先を判別して自動でポイント切替をするということも行っているようです。
トロコンは、このようなポイント切替だけではなく、自動車の通る道と交差する場所や、専用軌道区間の踏切などで警報機を作動させるスイッチとしても使われています。